オルタナティブ投資を始めた大学基金の運用成績はどうなった?

紙の本の定価は9180円、Kindle版のポイント還元を考慮しても6528円というお値段のアンドリュー・アング著『資産運用の本質―ファクター投資への体系的アプローチ』という本があります。

面白そうだけど、高いという印象を持っていた本でしたが、J.S.エコハさんが推奨しているのをAmazonのカスタマーレビューで発見しましたので、結局購入しました。

この本は892ページもある大著ですから、その分電子書籍化の恩恵も大きくなります。

Kindle版も用意されているのはありがたいですね。

まだ読みきれてはいませんが、お値段にふさわしい学びがある本ですので、Kindle版でハイライトをした箇所をいくつかご紹介したいと思います(第1弾です)。

オルタナティブ投資に傾斜した大学基金の運用成績が悪化

1990年代にハーバード、イェール、プリンストン大学がヘッジファンド投資を開始したのを皮切りに、その他の大学基金でも追随するように、プライベート・エクイティ、ヘッジファンドなどオルタナティブクラスへの資産配分が増加していきました。

その様子が示されているのが、図1.5のパネルAです。

株式からオルタナティブ資産へ運用をシフトした結果、運用成績はどうなったのでしょうか。

パネルBでは、大学基金の運用パフォーマンスが示されています。

「オルタナティブ投資で市況に左右されない絶対収益!」とはならずに、2008-2009年の金融危機の際には、盛大に損失を出しています。

大学基金は単に標準的な株式60%、債券40%の資産配分で投資していればよかったのかもしれない。大学基金の2001年以降の平均リターンは4.6%であり、S&P500指数と米国財務省証券からなる60/40ポートフォリオの5.4%より低い。そして60/40ポートフォリオのボラティリティは10.2%と、大学基金のボラティリティである11.3%よりも低かったのである。

オルタナティブ投資は結果的に、伝統的な分散投資スタイルに完全に敗北しました。

リスクが高いうえに、リターンも悪いとなると、オルタナティブ投資を行う価値は見出せません。

ところで、とある極東の島国では、「今年、プライベートエクイティ(PE)とインフラ事業への投資を増やす計画」があるようです。

オルタナティブ投資のリスク・リターン比の悪さが歴史的に証明されたように思える2017年になって、オルタナティブ投資に踏み込んでいくセンスには脱帽せざるを得ません。

参考インタビュー:GPIF、今年はPE・インフラ投資拡大へ=理事長 | ロイター

日本株は米国株に比べてダメなのか

バブル経済の終焉後の日本株のリターンは、日本国債に劣る悲惨なものでした。

その影響からか、最近では、日本株より米国株のほうが難易度が低いとインターネット上で主張される方も増えているようです。

しかし、1970年を始点とすると、2011年12月時点でも日本株が累積リターンで優位に立っています。

図3.1の期間の米国株の平均リターンとボラティリティはそれぞれ10.3%と15.7%であり、日本株はそれぞれ11.1%と21.7%となっていたとのことです。

チャートの尺度を少し変えるだけで、米国株優位のイメージと全く違った景色が見えてくるのが、長期投資の難しさでもあり、醍醐味を感じさせる点でもあります。

 地元企業への偏重投資により大やられする大学基金

地元企業へ傾斜した投資を行うことで、パフォーマンスを盛大に悪化させた大学基金も存在するようです。

ロチェスター大学の基金は、1971年に米国でも4番目に大きな私立大学基金でしたが、1992年には20位まで順位が低下しました。

1970~1992年の間、株式に60%、債券に40%投資する典型的なポートフォリオは11%のリターンをあげていたが、同基金のリターンは7%にすぎなかった。ロチェスター大学基金がもしこのベンチマーク・ポートフォリオに単純に投資していれば、同基金の順位は1992年時点で10位にランクづけされていたであろう。ちなみに、2011年には同基金の順位は30位にまで落ち込んでいる。ロチェスター大学基金がベンチマークのパフォーマンスを大幅に下回った大きな要因は、地元企業(例えば2012年に倒産したコダック社)への過度な集中投資である。

地元企業へ投資することで、応援するつもりだったのかもしれませんが、盛大にベンチマークに劣後してしまうのであれば、お話になりません。

応援だとか社会的貢献という要素を前面に押し出した投資は、投資対象の制約を課されるという点で難しいものがあるのでしょう。

分散された株式投資を心がけなければ、銘柄選定を誤ったときにドカンとやられてしまう。

そうした教訓をロチェスター大学基金は与えてくれるように思います。

更新情報はこちらから入手できます

こちらの記事もどうぞ