私が、お手軽に米国株に投資できるOne Tap BUYに批判的な眼を向けるのはなぜか

先日、3タップで米国株にお気軽投資できるスマホ証券のOne Tap BUYがツイッターで話題になっていました。

この機会に調べてみると、インターネット上では、1000円という低額から米国株投資を可能にしたOne Tap BUYは、脱PC化した昨今の若者が株式投資に入門するツールとしてよいのではないかというような好意的な意見もありました。その一方で、内藤忍氏の遺した、金融資産への投資で大切なものは「コスト、コスト、コスト」という教えを堅く守る低コスト派の投資家からは、米ドル=円の為替スプレッドが35銭と高い点や売買の際に売買金額にスプレッドが0.5%かかる点が批判されているようです。

One Tap BUYに代表されるお手軽投資に慎重でありたい

この記事のタイトルにあるように、私はOne Tap BUYには良い感情を持っていません。以下では、One Tap BUY批判の理由を述べていきたいと思います。

One Tap BUYの為替コスト

One Tap BUYは低資本の投資家にとっては一見すると、売買に際しての手数料がネット証券より低く、ありがたいサービスのように思えますが、お得なコストで取引できるのは取引金額が低いうちだけのことです。

私がメインとして利用しているSBI証券では、住信SBIネット銀行で日本円を米ドルに両替してから、SBI証券に入金を行うことができるサービスがありますが、この際の為替スプレッドは15銭です。これは、為替スプレッドが35銭かかるOne Tap BUYの半額以下のコストとなります。

為替取引にかかるコストを少し計算してみましたが、3000ドルを超えてくると、One Tap BUYはボロイ商売してるなという感が出てきます。

取引コスト 15銭 35銭
1,000ドル 150円 350円
3,000ドル 450円 1050円
5,000ドル 750円 1750円
1万ドル 1500円 3500円

One Tap BUYの売買コスト

One Tap BUYでは、米国株の売買の際に売買金額にスプレッドが0.5%かかります。一方で、SBI証券では約定金額に対して税込で0.486%のコストがかかります(下限は5.4ドル、上限は21.6ドル)。

今回もコストを少し計算してみましたが、SBI証券の取引コストの上限に達して以降、1万ドルのラインでは、One Tap BUYはただのぼったくり証券と化しています。

取引コスト 0.486%(下限・上限あり) 0.5%
1,000ドル 5.4ドル 5ドル
3,000ドル 14.58ドル 15ドル
5,000ドル 21.6ドル 25ドル
1万ドル 21.6ドル 50ドル

為替コストと売買コストの総合戦では明らかにSBIに分がある

具体的な数字を出さずに印象論を元に話を押し進める私にしては珍しく、今回は電卓を叩いて「本格的な計算」をしたので、この数字であっているのか、自分でも半信半疑なところはあります。

しかしながら、今回のコストの計算で、1000ドル程度の小口の取引でもSBI証券がOne Tap BUYにコスト面で勝っているといえることが判明しました。

参考1000ドル分、取引した場合のコスト(1ドル110円換算)

SBI証券の場合:150円+5.4ドル=744円

One Tap BUYの場合:350円+5ドル=900円

投資において、運用成績を確実に引き上げるためにはどうすればいいかと聞かれたら、私は「運用コストを可能な限り抑えろ」と答えるでしょう。それは、アクティブ運用だろうとパッシブ運用だろうと変わらない不変の真理です。

「若者向けの証券口座」という概念は成立しない

One Tap BUYの想定顧客であろう20代、30代の人々が将来的に獲得すると予測される労働報酬は大きいものです。One Tap BUYならネット証券と違って、1000円から投資できるとはいいますが、入金力のある若い人々が10年、20年と口座を使用していけば、個々の銘柄に多額の資金が積み上がっていくでしょう。

個別銘柄に投資する以上、インデックス投信やETFに投資する際のように出口戦略をあいまいにしておくわけにはいきません。One Tap BUYに口座を開設しようとしている人がいるのであれば、その前に、売却の際に%でかかってくる売買手数料を取られるのがいいのか、一定額の手数料を取られるのがいいのか、自分の頭で考えておいたほうがいいでしょう。

私は、街角の証券会社が宣伝文句として好む「老人向け、女性の投資信託」という概念は成立しないと思いますが、同様に「若者向けの証券口座」という概念も成立しないと思うのです。普遍的な意味でいい証券口座とは取引コストが安い証券会社の口座を指すのであって、スマホでお手軽に株に投資できる口座のことを指すわけではありません。One Tap BUYも、コストさえ安ければ、いい証券会社として推奨できる対象になる可能性はありますが、現状ではとてもその域には達していません。

投資可能な銘柄が30銘柄しかない

One Tap BUYでは、投資可能な銘柄が30銘柄しかありません。この点は安房さんがブログで突っ込みを入れているポイントです。さすがに、One Tap BUY口座保有者の意見は、私のような外野からの投石より耳を傾ける価値があります。

参考海舟の中で資産設計を ver2.0 OneTapBUYに銘柄拡充と自動買付を要望

なぜか、ETFは完全に排除され、セクター面でも分散が効いていない一般消費財、情報技術セクターに偏った銘柄選択が行われているようです(わかりやすいグラフが安房さんのブログにあります)。

これでは、柔軟なポートフォリオの構築が困難となるばかりか、個別株投資に特有の「選ぶ楽しみ」が大幅に損なわれてしまいます。ETFを含めて、投資可能な銘柄の拡充が求められることはいうまでもありません。

One Tap BUYは米国株より日本株向き

私は最近では、One Tap BUYは米国株というより日本株を対象にシステムを構築した方が良かったのではないかと考えています。小額資本で株式投資に参入できるというOne Tap BUYの利点は米国株より日本株でこそ輝くと思うのです。

米国株の場合、1株単位で投資が可能で、1株100ドル以下の銘柄が大半となっています(手数料さえ気にしなければ、子どものお小遣いレベルでも参入可能)。一方で、我らが日本株はというと、1単元あたり数万円から数百万円と取引にかかる金額に大きな開きがあります。

日本株も単元未満株制度を利用すれば、1株での取引が可能ですが、この際の取引手数料は通常の取引より割高です。日本株への投資なら、為替スプレッドも必要ありませんし、競争相手となる単元未満株制度は手数料的な競争力が低いものとなっています。

昨今の米国株ブームに乗ろうとしたのかもしれませんが、プレーヤーの数はやはり、日本株>越えられない壁>米国株ですから、米国株に注力するという突飛な決断をしたOne Tap BUYが10年後に元気な姿を見せてくれるのか、心配しています。

更新情報はこちらから入手できます

こちらの記事もどうぞ