私が原油ETFへの長期投資に反対するワケ

2014年7月には1バレル100ドル台だった原油価格が、2016年1月に入って30ドルを割り込んでいるようです。

世界金融危機の最中である2009年ごろに付けた安値でも、30ドルは切っていませんから、割安感に着目して原油ETFへ投資する人が増えているようです。

相場は上にも下にも行き過ぎる性質がありますから、短期的なリバウンド狙いの投資戦術として、原油ETFを利用するのはありだと思います(リスク管理はしっかりしましょう)。

原油価格が戻ると断定はできない

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上の原油相場のチャートを見ていただくと、2004年以前の原油価格はおおむね40ドル以下の水準であり、10ドル台もそう珍しくはなかったことがわかります。

サウジアラビアとイランの間で繰り広げられる原油増産のチキンレースはいつかは終焉を迎えるでしょうが、それがいつなのか正確なタイミングは誰にもわかりません。

原油価格が上昇するにしても、原油をロングする投資戦略が、株式を時価総額比率で買い持ちした場合を上回るリターンをもたらすかは不透明なため、原油そのものへの長期投資はおすすめできません。

コンタンゴによるロールオーバーコスト

原油ETFの長期買持ちにはコンタンゴの問題が付きまといます。

原油の先物市場は現在、期近物よりも期先物の価格が高いコンタンゴと呼ばれる状態になっています。

原油ETFの運用では先物への投資が行われているので、安い期近物を売って、高い期先物を買うロールオーバーを定期的に行う必要があります。

ロールオーバーにかかるコストは投資家に転嫁されますから、原油ETFには長期的には減価していく圧力が働きます。

原油ETFへの投資には、エントリーとイグジットのタイミングを正確に計る相場感が必須なのです。

配当再投資戦術で長期的なリターンを向上させる配当が出ない

株式や債券と違って、原油それ自体は新たな付加価値を生み出しませんから、キャピタルゲインを得られたとしても、インカムゲインは得ることができません。

配当には再投資に回すことで、雪だるま式に資産を増やしていく効果があります。

通常時に配当再投資するのもいいですが、その真価は株価の低迷期になると十二分に発揮されます。

株式には業績が悪化していても、株価の減少率ほどには配当が減配されないという減配抵抗性があります。

減配をやりすぎてしまうと、株主からの経営陣に対する責任追及が激しくなりますから、経営側の政治的な判断としてこうなるようです。

株価低迷期に株価ほどは減少しない配当を再投資に回すと、株数を増やし、平均取得単価を下げるという絶大な効果がもたらされます。

ゆえに、原油ETFへの長期投資のリターンが、株式への長期分散投資での収益を上回るのは困難と考えてよいでしょう。

原油ETFへの長期投資がなぜダメなのか、ここまで読んで下さった皆さんには、理解していただけたかと思います。

エネルギー株ETFを活用すべき

幸いにも、原油価格の低迷に着目した投資戦略を実行するのに、うってつけの海外ETFが日本の証券会社で買付可能です。

iシェアーズ グローバル・エネルギー ETF(IXC)

IXCは総経費率0.47%で、87のエネルギー関連企業にグローバルに投資するETFです。

バンガードR・米国エネルギー・セクターETF(VDE)(PDF)

VDEは総経費率0.10%で、アメリカの146のエネルギー関連企業に投資するETFです。

VDEはアメリカ企業にしか投資しませんが、経費率の安さと銘柄数の多さが評価できます。

IXCの方が経費率が高いですが、投資対象となる国が一国に集中していないのは評価できます。

ただし、アメリカの割合が6割程度になっているため、VDEより少ないながらもアメリカのカントリーリスクを取っていることは投資前に織り込んでおきましょう。

どちらにするかはお好みで

双方とも一長一短ありますので、どちらに投資するか(あるいは両方)は各人のお好みでとしか言いようがありません。

バンガードが、経費率が安くて銘柄数の多いグローバルセクターETFを出してくれれば、それ一択かもしれませんが、現状ではそんなものはありません。

ちなみに、私はVDEに投資しています。

原油ETFとエネルギー株ETFのパフォーマンス比較

原油先物に投資するコモディティETFの「ユナイテッド・ステーツ・オイル・ファンド」(ティッカー:USO)の過去のパフォーマンスをエネルギー株ETFであるIXCとVDEと比較してみました。

過去10年のチャート

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-84.61%とダントツで成績が悪いのが原油ETFであるUSOです。

VDEは12%、IXCは-11.23%となっています。

VDEの好調ぶりはアメリカ株の強さに支えられている部分もあるとは思いますが、全世界エネルギー株ETFのIXCでも-11.23%という許せるレベルの損失に落ち着いていると思います。

USOは-80%台の巨大な損失を築きあげています。

年初来のチャート

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原油の反転上昇相場で、完全にUSOはIXCとVDEに置いて行かれてしまっています

配当がないこととロールオーバーコストがじわじわと原油ETFのパフォーマンスを悪化させている様子が想像されます。

このチャートを見てもなお、原油ETFに長期投資しようというのなら、それでも構いませんが、それはあまりにも分が悪い賭けです。

少しでも良いリターンを狙うなら、エネルギー株ETFに投資しましょう。

運用成績は「株数×平均取得単価」で決まる

原油価格の底値がどうなるかは、ただ神のみぞ知るところですから、長期的なスタンスで構える投資家は長期の含み損を前提とする投資戦略を立てるのが賢明です。

投資成績を評価する方程式は「株数×平均取得単価」です。

株価の長期停滞期に平均取得単価を抑えつつ、多くの株を買い込むことができたら、将来の株価上昇時にはその我慢が報われる十分なリターンが提供されます。

含み損も平均取得単価を下げつつ、株数を増やす機会と捉えれば、全く怖くないどころかむしろ天啓のように思えてきます。

仮に、原油価格が100ドル程度まで値を上げていく展開が来たときには、原油先物に投資するETFより、原油で生業を立てている企業の株式のほうがほぼ間違いなく高いリターンをあげるでしょう。

原油ETFに投資して収益機会を喪失してしまう人がいなくなることを祈って、筆を置かせていただきます。

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