ETFの積立投資を提唱する金融審議会「市場ワーキング・グループ」報告書が意義深い

昨年の12月22日に金融庁から、金融審議会「市場ワーキング・グループ」報告書が公開されました。

この報告書は、国民の安定的な資産形成に向けた取組みや市場・取引所を巡る制度整備などについて、計12回にわたり、「市場ワーキング・グループ」で検討した結果がまとめられたものとなっています。

たぱぞうさんのブログで存在を知りました。

参考金融審議会、市場ワーキング・グループの報告がおもしろい – たぱぞうの米国株投資

参考金融審議会「市場ワーキング・グループ」報告書の公表について:金融庁

インデックスETFの利用を促進する必要

全5章からなる報告書の中で、とりわけ注目されるのがインデックスETFが題材となっている第2章(国民の安定的な資産形成における ETF の活用とインデックス運用の位置付け)です。

第2章は、次のような文章から始まります。

国民が安定的な資産形成を行うためには、長期の積立・分散投資が有効と考えられる。投資対象をグローバルに分散させることで世界経済の成長の果実を享受することが可能となり、投資時期の分散(積立投資)により高値掴み等のリスクを軽減できるほか、長期で保有することにより投資リターンの安定化が可能となる。

投資先と時間の分散、損失リスクを縮小させる長期保有の重要性と、多くの長期投資家が首肯するであろう見事な認識が示されています。

これを実現するための運用対象として、ETF(上場投資信託)は、少額でも分散投資が可能であるほか、透明性が高いといったメリットもあると考えられる。また、一般的には、同種の投資信託に比して ETF の方がコストが低いされている。こうした観点からは、ETF は国民の安定的な資産形成に向けて本来有用な投資商品と考えられる。
しかしながら、現状、国民の安定的な資産形成のために ETF が十分に活用されているとは言い難い状況にあり、以下のような課題について、取引所等の関係者における検討が求められる。

ETFは同種の投資信託と比較して、コストが低く、積極的に活用していくべきであるが、現状ではそのようになっていないと問題認識が示されています。

これを受けて、ETFの活用促進に向けて、以下3つの主張がされています。

(1)ETF 市場の流動性の向上

(2)ETF の認知度の向上

(3)長期・分散・積立投資における ETF の活用促進策

(1)ETF 市場の流動性の向上

多くのETF投資家が口をそろえるように、国内ETFの取引市場は絶対的な参加者の数が低く、売買高が低いのが現状です。

ETFの流動性が低ければ、望むタイミングで大口の注文を適正価格で約定させることはできなくなります。

また、市場価格と基準価額が乖離して、小口の注文でも、基準価額より大幅に高い金額でETFを買ってしまったり、基準価額より大幅に安い金額でETFを売ってしまったりする恐れがあります。

報告書では、

ETF に関して常に適切な価格で十分な注文が提示されるよう、取引所を中心とした関係者において、取引の公正に留意しつつ、マーケットメイク制度の導入に向けた検討を行うとともに、マーケットメイカーが注文を提示しやすい環境を整備するため、必要に応じ関係府令等の改正を検討することが適当である。
また、ETF に係る価格調整メカニズムを円滑化し、流動性の向上を図る観点からは、関係者が協力し、ETF の設定・交換に係る期間(現行:T+4~T+6)を短縮すべく、手続きの効率化に向けた検討を行うことが適当である。

とされています。

マーケットメイカーが働いているのか、いないのか、よくわからないのが現状ですから、必要な法改正等によって、マーケットメイカーが裁定取引をしやすい環境を整備して、ビジネスとしての旨みを出すのは必要な施策だと思います。

(2)ETF の認知度の向上

銀行や証券会社は昔は毎月分配型投資信託、今ではラップ口座、ラップファンドの販売に力を注ぎ、収益力に劣るインデックスファンドやETFを積極的に売り込むことはありません。

銀行や証券会社で投資の相談をしてしまうような投資に疎い人の場合は、高コストな金融商品に誘導され、カモにされてしまうのが、残念ながら現状です。

報告書では、販売会社で投資信託を販売する際に、同種のETFがある場合には手数料の違いも含めて顧客に商品を比較できる情報(取引所において作成した説明資料)が提供されるように求めています

また、「なお、銀行等の登録金融機関における ETF の窓口販売(証券会社への取次ぎ、媒介等を含む。)は、制度上は既に認められているところである」とETFの取り扱いに消極的な販売会社の逃げ道をしっかりふさいでいます。

(3)長期・分散・積立投資における ETF の活用促進策

ETFは継続的に保有するコストは投資信託より低くなっていますが、入口と出口で必要な取引手数料は投資信託より高くなっています。

また、取引に要する最小単位が投信の積立の場合、500円から1000円程度となっているのに対し、ETFの場合、1万円前後は必要なものが多い印象です。

ETFの積立投資を盛んにするために、報告書では、積立に適した手数料のあり方等を含め、小額でのETF積立投資を可能とする商品設計の検討が適当とされています。

ETF(海外ETF含む)の積立投資は、ブログやツイッターでの日頃の様子を見るに、希望している投資家も多いように見受けられるので、大手ネット証券にはETFの積立投資を可能ならしめるシステムの開発を期待したいところです。

おわりに

ETFは投資信託よりランニングコストが低く、ある程度まとまった額を運用する長期投資の器としては優れていますが、積立投資のツールとして小額の資金で取引すると、取引手数料がかさんでしまうのが難点でした。

金融審議会で作成された報告書がどれだけの重みを金融庁で持つのかは不明ですが、国内ETFの流動性向上、ほったらかし型積立投資の解禁がここで提唱された意義は大きいと考えます。

願わくば、国内ETF市場が活況化し、多種多様なETFが取引できるようにならんことを。

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