既存eMAXISホルダーを背後から匕首で刺したeMAXIS Slimシリーズの新設

三菱UFJ国際投信は、2017年2月27日に「eMAXIS Slim(イーマクシス スリム)」シリーズの投資信託4本を設定します。

プレスリリースによると、eMAXIS Slimは、「他社類似ファンドの運用コストに注意を払い、機動的に信託報酬を引き下げることによって、今も、そしてこれからも業界最低水準※を目指し続けるインデックスファンド」とのことです。

投資家に過剰な期待を持たせかねない「業界最低水準」という文言には、抜かりなく注が付けられています。

※対象範囲:ETF・DCを除く公募追加型株式投信を Fundmark の分類を参考に三菱 UFJ 国際投信で集計。他社類似ファンドが信託報酬率の引き下げを行った場合、当ファンドの信託報酬率も引き下げ、業界最低水準にすることを目指しますが、これを実現することを保証するものではありません。他社類似ファンドが信託報酬率の引き下げを行った場合、業界最低水準ではない期間が存在する旨、ご留意ください。

参考Press Release

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既存のeMAXISのファンドの信託報酬引き下げはなし

既存のeMAXISのファンドの信託報酬が引き下げられるという日本経済新聞の誤った報道に、「古豪が動いた」とインデックス投資ブロガー界は賛嘆の声を上げていましたが、実際には信託報酬の引き下げではなく、新ファンドの創設となりました。

東証株価指数(TOPIX)連動型の信託報酬は年0.4%からニッセイアセットマネジメントと同じ0.18%に、国内債券型は0.4%から大和証券投資信託委託と並ぶ0.14%に見直す。ともに業界最低水準となる。

参考三菱UFJ国際投信、投信手数料「常に業界最低」に  :日本経済新聞

既存のeMAXISのファンドの信託報酬が引き下げれれるのであれば、三菱UFJ国際投信を信頼して、たわらやニッセイに浮気しなかった投資家が報われる素晴らしい展開となりましたが、残念ながらそうはなりませんでした。

業界最低水準のコストへの追従を目指すeMAXIS Slimシリーズの新設は、私には「既存のeMAXISシリーズの信託報酬の引き下げはもうやりません」という宣言のように思えます。

三菱UFJ国際投信に見捨てられた形となるeMAXISホルダーたちの今の心境を思うとやるせなくなります。

新ファンド設立の原因は販売会社か三菱UFJ国際投信か

eMAXISに投資している既存の投資家を落胆させた今回のeMAXIS Slimシリーズの新設ですが、考えられる原因としてまず、あがってきたのが販売会社の責を問う「受託者責任論」でした。

「受託者責任論」を粗雑に要約しますと、

三菱UFJ国際投信は信託報酬引き下げのために、地銀を含む多種多様な販売会社に働きかけを行ったものの、その努力もむなしく、断られてしまった。投資家の利益を尊重する「受託者責任」を鑑みずに、自分たちの利益のことばかりを考える販売会社に今回の件の責任がある。

というような論旨です。

eMAXISの販路は下のように、実に多岐にわたっています。

出典販売会社一覧 | eMAXIS

私はこの主張に、一片の理もないと反論する気はありません。

しかし、地銀等に働きかけを行う以前に、三菱UFJ国際投信自身に既存ファンドの信託報酬引き下げを行う気がそもそもなかったように思います。

eMAXISの既得の運営収益を手放すことになってしまう信託報酬引き下げは、三菱UFJ国際投信としては何としてでも避けたいはずです。


さんろくまるさんがツイッター上で、述べられたように、新ファンド設立の路線は過去に打ち出された「受益者還元型」信託報酬の路線と符合します。

「受益者還元型」信託報酬とは、eMAXISの各ファンドの純資産 500 億円以上 1,000 億円未満の部分について適用する信託報酬率を年0.02%(税抜)引き下げ、1,000 億円以上の部分については年0.04%(税抜)引き下げるという実効性のきわめて低い制度でした(現在500億円越えのファンドはなし)。

参考【実効性は?】×eMAXISが信託報酬を引き下げ〇eMAXISが「受益者還元」を拡大

両者に共通するのは、既に確保されたファンドの運営収益を一切損なうことがない点です。

「業界最低水準」にまで信託報酬を引き下げるという狡知

三菱UFJ国際投信は自分自身の利益が削られてしまう単純な信託報酬引き下げに乗り出す気はないようです。

それは、eMAXIS Slimの「業界最低水準」と同じライン(オンリーワンの最安水準ではない)にまで信託報酬を引き下げるという挑戦的なようでいて、その実、ディフェンシブな戦略にも現れています。

「業界最低水準」に追従して無限のコスト引き下げをeMAXIS Slimが行うとなると、ほかのインデックスファンドプロバイダーにとってはコスト引き下げのメリットが低下しますから、コスト競争が鈍化する恐れもあります。

三菱UFJ国際投信が、とんでもない鬼子を世に送り出したという見方もできるわけで、今となってはeMAXIS Slimの誕生を全く歓迎できない心境です。

民族の誇りを守るために、「日本鬼子」に抵抗した中国人を見習って、私も低コスト派の投資家の誇りを守るために、eMAXIS Slim(とその背後の三菱UFJ国際投信)に対するレジスタンス活動を展開していきたいと思いました。

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