GPIFが新しく作るまでもなく、すでに日本株ESG指数はあった

年金積立金を運用するGPIFがESG指数への投資を始めようとしているようです。

何の工夫もなく普通に市場平均に投資していれば取れたリターンを、変な小細工をしたばかりに取り逃がすようでは話にならんのです。

引用 海舟の中で資産設計を ver2.0 ESG投資のための指数作成って何の冗談ですか

ESG指数への投資にはアクティブ運用に付き物の市場平均を下回るリスクがあります。

ブロガーの安房さんが鋭く指摘しているように、市場平均を超越するパフォーマンスが得られないのであれば、ESG指数への投資には何の魅力もありません。

ESG指数への投資(アメリカの場合)

ESG投資では、環境・社会・企業統治への意識の高い企業を応援するために、リターンを犠牲に投資するわけではない。ESGに気を配っている企業の株は、漫然とした経営を行っている企業よりリスクが低く、市場平均よりも優れたパフォーマンスを発揮している。

というのがESG投資推進者の言説に多く見られます。

では、本当に優れたリターンを投資家にもたらしているのかアメリカ株式を対象とするETFで見てみましょう。

MSCI USA ESG Select Indexに連動するように運用される「iシェアーズ MSCI 米国 ESG セレクト ETF(KLD)」は過去10年のリターンで、時価総額ETFのVTIに8.54%劣後するという屈辱を味わっています。

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ESG指数で投資対象になっているのは、今現在「 Environment(環境)」、「Social(社会)」、「Governance(企業統治)」に配慮した企業運営をしている企業です。

そうした「いい会社」を選別した指数を作って投資しても、強敵である市場平均を打ち負かすのは簡単ではありません。

世界金融危機で市場平均と軌を一にするように下落して、その後の上げ相場では置いて行かれるESG指数はアルファを狙いに行く手段としてはお話になりません。

日本株ESG指数

GPIFは新規にESG指数を作るようですが、すでに、MSCI JAPAN ESG INDEXとS&P/TOPIX 150 ESG INDEXというESG指数があるようです。

MSCI JAPAN ESG INDEXの場合

MSCI JAPAN ESG INDEXは、まだ運用が開始されていないインデックスだと思いますが、バックテストの結果としては、貧弱な結果が出ています。

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出典 MSCI Japan ESG Index

2007年8月からのリターンの比較では、MSCI JAPAN ESGがMSCI JAPANを0.49%上回るだけという微妙な結果となっています。

こういった新しい指数は過去のパフォーマンスがよくなるように設計できる「後出しじゃんけん」的な性格があるにもかかわらず、微妙としかいえない成績ですね。

MSCI JAPAN ESGが実際に運用開始されたら、時価総額ETFよりも高いコストや「後出しじゃんけん」効果の消滅で市場平均を劣後する予感がします。

S&P/TOPIX 150 ESG INDEXの場合

S&P/TOPIX 150 ESG INDEXというESG指数もあります。

こちらは、MSCIの指数よりも優れたバックテストの結果が出ています。

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出典 S&P/TOPIX 150 ESG INDEX

S&P/TOPIX 150の5年間のトータルリターンが10.33%のところ、S&P/TOPIX 150 ESGのトータルリターンは12.65%となっています。

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指数の構成上位には、損保ジャパン日本興亜ホールディングスやMS&ADインシュアランスグループホールディングスが入っていたりして、時価総額モノと比べ、特徴のある銘柄選定ができていますから、それが功を奏したのかもしれません。

実はパッシブな運用でもアクティブなESG投資はできる

ESG投資の出発点にあった目標は「いい会社」に投資していい気分になることではなく、社会全体を投資を通じてより良い方向へ作り変えることだったと思います。

その大目標をGPIFの投資行動を通じて達成していくことを考えると、ESG指数への投資は賢明な判断ではありません。

なぜなら、すでに環境・社会・企業統治に気を配っている会社に投資しても、それ以外の企業に与える影響は限定的だからです。

労を惜しまず、本気で社会改良に取り組むとすれば、投資対象から「悪い会社」を排除するのではなく、大株主として、経営陣に改革圧力をかけるアクティブ性のある要素が重要になってきます。

例えば、三井住友トラストグループでは、SRIファンドに限らず、「悪い会社」を排除できないインデックスファンドでも企業に働きかけるエンゲージメント活動を行っているようです。

参考 インデックス投資(パッシブ運用)でもできるESG投資 – “いい投資”探検日誌 from 新所沢

巨大な運用資産を抱えるGPIFが新たにESG指数を作成する必要はないと私は考えます。

わざわざESG投資用の枠を新設しなくても、既存の投資先に対する働きかけを強化していけば、それで十分に公的な投資機関としての責任は果たしているといえるのではないでしょうか。

ESG投資ではなくESG指数投資を始めるという時点で、GPIFのやる気のなさというか熱量の少なさが感じられるので、期待薄ですが。

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