森林や船舶への投資で年利10%を手に入れられるのなら、投資家は誰も苦労しない

マイナス金利の浸透で収益力が落ちた債券や先行きが不透明な株式を懸念してか、年10%前後の利回り確保を狙う非伝統的な投資手法が注目を集めているようです。

日本経済新聞によると、株や債券に代わるオルタナティブ投資の対象は、森林や農地、船舶、病院、上下水道や送配電網、大災害債券、住宅ローン担保債券と多岐にわたっています。

参考 森林や船舶に変わり種投資、収益を分配 運用各社  :日本経済新聞

年利10%は言うほど簡単ではない

例えば、カナダの運用会社であるマニュライフ・アセット・マネジメントは期待リターン年10%を掲げて、森林と農地に投資する新ファンドを日本で立ち上げるようです。

北米やオーストラリアで森林や農地を手に入れ、そこで得る木材やナッツ、トウモロコシなどの販売収益を投資家に配分する。ファンドの規模は現在詰めているが、投資家は10億円程度から投資し、利回りは10%強を確保できるという。「株式や債券の変動と連動しにくく、投資家はリスク分散効果を得られる」(藤本雅彦・機関投資家営業部長)という。

営業部長の藤本氏が主張しているように、森林や農地でのビジネスを行うファンドには、株価や債券の価格変動とは一線を画した値動きが期待できそうです。

しかし、年利10%を達成するには相応のリスクを背負い込んでいかなければならないでしょう。

森林なら山火事で木材が焼失するリスク、農地ならハリケーンリスク、干ばつリスク…といったような独特なリスクが新たに発生してくるでしょう。

ローリスクで年利10%を達成できるかのような印象を受け手側に与える、利回り強調型の営業活動は控えてほしいものです。

顧客は個人投資家ではなく、機関投資家なのが救いでしょうか(中途半端に意識が高い企業年金が釣られそうな気もしますが)。

過去1年の株式ETFのパフォーマンス

参考までに過去1年の株式ETF、計5銘柄のチャートを下に転載しておきます。

2016-10-29_15h00_29

iシェアーズ・米国航空宇宙・防衛ETF(ITA)の10.02%を筆頭に、バンガード・米国生活必需品セクターETF(VDC)の5.67%、iシェアーズ グローバル・ティンバー&フォレストリー ETF(WOOD)の2.93%、バンガード・トータル・ワールド・ストックETF(VT)の0.4%、バンガード・米国ヘルスケア・セクターETF (VHT)の-5.33%と続いています。

アメリカの防衛セクターに投資できるETFのITAは過去のリターンが高いことから、エイト証券以外の日本の証券会社からは投資ができないにもかかわらず、注目されています。

過去1年という期間で、年利10%を達成できているのはさすがですね。

木材および林業事業に関連するグローバル株式で構成されるWOODは2.93%のリターンしかありません。

これはこれで、VTの0.4%をアウトパフォームしているわけですから、過去1年の株式ETFとしては良好な結果だったといえます。

しかし、森林投資で安定して年利10%などという謳い文句はこの結果を見る限り、信用しない方がよいと愚考します。

儲からないからと投資戦略を変えると、もっと儲からない

格付投資情報センター(R&I)の調べでは主要110社の企業年金の運用利回りは2015年度にマイナス1%で、5年ぶりにマイナスに転じた。16年4~9月期もマイナス0.3%と苦戦している。こうした事情もあり、企業年金の運用に占めるオルタナティブの割合は9.8%(8月末時点)で、10年前の約3%から大きく上昇した。

相場環境が悪い時でも、収益を手に入れたいという絶対収益の願望から、企業年金はオルタナティブ投資に傾斜していっているのだと思います。

しかし、「オルタナティブ投資でいつでも年利10%!」は「FXの自動売買プログラムで億り人!」と同じぐらい達成困難なものです。

もし、オルタナティブ投資でコンスタントに利回り10%を確保できるようなら、当ブログのタイトルを「オルタナティブ投資でウェイウェイ資産形成。」に変えても構いません。

企業年金には、「株や債券への長期分散投資なら絶対儲かる」ぐらいの投資姿勢を取ってもらわないと、本来なら得られたはずの利益を取りこぼし、運用資金の出し手に実質的な損害を与える羽目になるように思えます。

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